わたしの人生で一番泣いた日

その場にいる誰よりわたしは泣いていた。
Iさんのお葬式は自宅での家族葬だった。

お身内とご近所の方を合わせて10人ほどが
Iさんの住んでいたハイツに参列した。

わたしは、お通夜にもお葬式にも
娘2人を連れて行った。

Iさんは、わたしの娘たちにも
お菓子やおもちゃを持ってきてくれた。

ほめ言葉、言われて嬉しい言葉をかけてくれる
愛情深くて与えることを惜しまない人だった。

Iさんが、母とわたしにしてくれたこと・・・

母と友達になってくれたこと。
母の部屋に遊びに来てくれたこと。
母のことを本気で「好きやもん」と言ってくれたこと。
母の長所や恵まれていることを率直に言葉にしてくれたこと。
母と仲が悪いわたしに説教したり、責めなかったこと。
母に、わたしの車を買い替えてあげるように言ってくれたこと。
母と一緒に、高齢者施設の見学に行ってくれたこと。
母に一人暮らしを勧めてくれたこと。
母の借りるアパートの内覧や契約に同伴してくれたこと。
母のアパートに足繁く通ってきてくれたこと。
母に認知症の検査を受けさせるため、病院に付き添ってくれたこと。
母名義の預金の解約のため、母と郵便局に居てくれたこと。

・・・たくさん、たくさん、ある。

Iさんと一緒に居る母は、気持ちが穏やかで
文句を言いつつ、Iさんの言うことは聞くのだ。

わたしは、母とわたし2人きりになることに
耐えられない精神状態になってしまっていて

本人が行かなければならない病院や
本人確認の必要な手続きに母を連れ出せなかった。

わたし1人では、絶対にできなかったことを
必要なことの全部を、Iさんはやってくれた。

Iさんに、感謝しても感謝し尽くせない思いが
あふれてきて、わたしはお礼の手紙を書いた。
そして、棺の中のIさんに手渡した。

母は棺に向かって
「こんなとこ、入ってしもて……」と声をかけた。
その場面以外に母の様子はまったく覚えていない。

しゃくりあげてボロッボロになって泣いている
わたしの顔を、娘が心配そうに見上げていた。

周囲の視線を感じてもこらえることができない。
ハンカチが何の役にも立たなかった。

わたしの母親はIさんだったんじゃないのか、、、
マジで思ったくらい、泣いた。

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