座敷婆語翻訳機

母と同居して半年、悶々としながらも
言いたいことを我慢していたのは
わたしが身につけた習い性だったのだろう。

わたしが母に何か言ったところで
不毛さ、無力感、諦めの気持ちが心に充満して
黙っているより心が苦しくなるのです。
決してすっきりすることがないのです。

でも、半年我慢したとはいえ
以前のわたしならやり過ごせたことが
どうにも許せなくなっていました。
結婚による自分の変化を感じました。

母の急所をついた言葉が出た一件の後
さらに事件が起こりました。

家族旅行問題です。

夫が、北海道に行こうと提案してきました。
テレビで観た、旭山動物園に行ってみたいと
言うのです。わたしも一緒に観ていました。

旭山動物園では、動物の習性を活かした
展示方法で、動物との距離が近いのです。

ペンギンのお散歩を
こどもたちに見せてやりたい!

北海道!行きたい!でも!座敷婆が!

座敷婆と一緒に行く旅行がどうなるか
わたしは知っていました。

旅行に行ったって、場所が変わったって
座敷婆の言動は変わらないのです。

わざわざ、お金を使って時間を使って
嫌な思い出を作りたくありません。

でも、いくらなんでも誘わないわけにいかない。
旅行に行くことは、まだ決定ではなかったけど
北海道旅行の計画を座敷婆に話してみました。

「もし行けたら、北海道へ旅行に行きたいな
と思ってるけど、お母さんはどう?」

母は笑いながらこう言った。

「は?北海道?寒っ、そんなとこよう行くわ。
ワタシは飛行機乗ってまでよう行かんわ」

これを座敷婆語翻訳機にかけると

「ええや〜ん、北海道!寒いし遠いけど
ワタシ飛行機乗ったことないし、行きたいわ」

となります。

わたしはいつも
言葉の裏にある母の気持ちを察しながら
生きてきました。

でも、この時から
母の言葉の裏を読むのをやめました。
もう疲れました。

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