アルツハイマーで記憶が失われていく母。
どん詰まりになった母娘の前に現れた救世主のIさんや
一人暮らししたアパートのことなども忘れていった。
その話題はもう母の口から出てこなくなったのに
母の引き出しから出てくるのは
同居の恨みつらみが書かれたメモ。
アンタとこにいても金貸せ言われる
ワタシが出したお金で車買ったりする
田舎に帰って姪に見てもらう
マンションもお金も姪に譲る
孫たちと一緒に住みたい
いつまでもたっても
愚痴や不平不満、ネガティブな感情を持ち続ける
母を思うと切なくなった。
「同居してたことを忘れてしまえば、嫌な感情に囚われずにすむのに」
わたしはそんな思考に取り憑かれた。
母の居室を片付けながら、目を皿のようにして
母の持ち物の中に紛れ込んでいるメモやハガキなど
同居していたことを思い起こす紙類を、探して捨てた。
ほぼ捨て終わったかと思った頃
手のひらサイズのメモ帳を見つけた。
1月31日
〇〇◯(次女の名前)のふとんのカバーを作った
次は何しよう
と、日記が書かれていて
あの母が、日記なんかを書いていることに驚き
前向きな内容だったことに、さらに驚いた。
書くことで消えていく記憶を繋ぎとめているのか
と思うのと同時に、わたしに魔が差した。
一瞬の、でも激しい葛藤の中で
「お前は罪を犯すのか?」と、自分に問うた。
わたしは罪悪感と罪の報いを背負う覚悟をした。
「ぜんぶ、ぜんぶ、忘れてしまえ!」
心で叫びながら
わたしは、日記の1ページを、ちぎった。
母の前向きな未来を自分の手の中に握りつぶした。
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