わたしが短大を卒業し、就職して稼ぎだすと
母娘のパワーバランスが崩れ始めた。
母は、学生の時のように
「アンタになんぼかかってると思ってんの!」
などとは、わたしに言わなくなった。
母の恩の着せ方は、微妙に変化していった。
ひとり娘のわたしの未来に取引を仕掛けてきて
次第に、取引金額は大きくなっていった。
世間で結婚適齢期と言われていた20代には
「結婚して、一緒に住んでくれるんやったら
家の頭金、出したげてもいいで」
と、母は、彼氏もいないわたしに言った。
母は、同じことをくり返し言う人。
独身期間が長かったわたしは
15年以上、このセリフを聞くことになった。
他にもよく母は
「ワタシがしんだら、ワタシの保険金は全部
アンタのもんになるんやから」
と言い、そこで言い終わった。
その時のわたしは、母の意図がわからなくて
「で?わたしのもんになるなら、すぐしんで?」
辟易して、わたしはそんなことを思った。
社会人になってから、わたしが本来払うべきお金を
母は「アンタ、払いや」と言いつつ徴収するまではせず
わたしも気がなくて、結局なあなあになり母が払った。
後々になって、わたしに収入がない時に限って
「◯◯のお金も、ワタシが払ってあげてるんやで」
と、母はわざわざ言ってきた。
それで、わたしが「お金、返すわ」と言えば
「いや、かまへんけどな、べつに返さんでもいいけどな」
と、母は言うのだった。
「アンタが払いなさい」と言っておきながら
「ワタシが払ってあげている」と言い
「べつに返さなくていい」という矛盾したメッセージ。
これがダブルバインドというコミュニケーションだと
わたしは知らなかった。時間がかかってもお金を返す
気概のない自分の甘さやズルさにも向き合わなかった。
先ほどの「本来、わたしが払うべきお金」というのは
1つは、母が申請した貸与型奨学金だった。
愚痴を言うならば、知らぬ間に背負わされた借金だ。
もう1つは、32歳、独身、乳がんの手術入院費。
仕事を辞め、一人暮らしから実家に戻り、貯金もなく
「出しといてあげる」と母が負担してくれた。
転職や引っ越しを重ね、いい年なのに稼ぎや蓄えもなく
恩を着せる母を嫌いながら、その母の世話になっている
自分の不甲斐なさといったらない。
そして、32歳、独身、人生最大のピンチをとおして
わたしの人生の課題は病気ではないことに気づいた。
人生の悩みの根本に、母娘関係があることを悟った。
「ワタシが出しといたげる」と恩を着せる母の真意は
「だから、ワタシがしぬまで一緒にいてほしい」
ということなのだと、身に染みてわかってきた。
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